ある寒い日の夜  Hitobon

東京は午後から冬の冷たい雨が降っています。
久山は「寒い、冷たい、濡れる」が嫌いでした。
夏でも冷たいおしぼりを使うことを嫌がっていたくらいですから、冬の雨は超が3つ付くほど大嫌いでした。

久山は「絶対に濡れなくて絶対に寒くない服装」を研究?していましたし、アウトドア専門店で「一番あったかいやつチョウダイ!」と言って南極にでも行くかのような巨大ダウンジャケットを買ってくるほどでした。

今日、どんどん強くなる雨音を聞きながら、3年前の12月中旬のことを思い出しました。
まだ自分が癌だとわかっていない頃です。寒い日でしたが雨は降っていませんでした。私たちは、友人が出演する原宿のラ・ドンナというライブハウスに出かけました。もちろん久山はお気に入りの暖かいコートにマフラーと帽子に手袋。確かワークブーツを履いていたと思います。私もつられてモコモコのダウンコートに買ったばかりの帽子を被って出かけました。

久しぶりに会う友人たちも集まっていて、私たちの席はワイワイと賑やかでした。このライブハウスはちゃんとお料理やワインも出てくるのでゆったり座って飲んだり食べたりできるところです。私たちは、友人の奏でる気持ちのいい笛とピアノの音楽に癒されながら食事をしていました。横にいたKちゃんに「ねえ、久山君、顔色悪くない?」と言われて、そうかな~と思いましたが、暗いライブハウスの中なのであまり気にしていませんでした。でも、いつもなら「ちょっとだけ~」が1杯に。「1杯だけ~」が3杯4杯になる久山なのに、1杯目のお酒がグラスに残っていました。
ライブが終わってからどこへも寄らずに自宅に帰ることにしましたが「絶対に寒くない服装」をしているのに久山は全身ガタガタ震えて顔色は真っ白。いくら寒いのが嫌いな久山でもこんな震える姿を見たのは初めてでした。タクシーで帰れば良かったかな?と思ったところに電車が来たので乗り込みましたがまだ震えています。なんとかかんとか永福町まで帰りつきあとは家まで普通に歩くと5分程。もうその時の震え方は尋常ではありませんでした。私が久山の体を抱きかかえる形で歩きました。気持ちは焦るけどゆっくりしか歩けず家まで30分くらいに思えました。確か熱は39度以上あったと記憶しています。次の日に近くのクリニックで看てもらいましたが「悪質な風邪だろう」とのことでした。

急な激しい悪寒と39度以上の発熱。闘病中のある時期に毎日起こった病状のひとつです。

ライブハウスの帰りに久山を襲った悪寒と発熱は、悪質な風邪なんかではなく、彼の体に起こっている異常を知らせる緊急アラームだったんだと今では思います。

これを読んでくださった方、いつもと違う異常を感じたら「風邪」や「加齢」で済まさずにちゃんと検査してください。もしそれが深刻な病気だったとしても早く見つけるきっかけとなります。

Hitobon

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