久山との旅「久山の帽子、父の帽子」 原田宗典

やあ、久山、久しぶり。ここに書くのは二ヶ月ぶりくらいかな。でもその間、毎日のようにおまえのことを思い出しているよ。それはやっぱり形見わけで貰ったおまえの鞄と帽子のせいだな。吉田鞄の鞄を肩にかけて、星と熊の描かれた帽子をかぶるたびに、ぼくは心の中で呟く。
「よっしゃ、久山、行こうぜ」
そうやって勢いをつけて町へ出かけるんだ。鞄はともかく、この帽子、久山には似合ってたけど、多分ぼくが被ると、ちょっと浮いて見えるらしい。初めて見る人は、
「なあに、その帽子?」
と尋ねてくる。するとぼくはちょっと嬉しくなって
「いや、実はこれはね・・・」
と帽子の由来を語るのだ。そういう時、すぐそばに久山、おまえがいるような気がして、何とも言えず嬉しいんだよ。分かるだろ?
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久山との旅 / 「今年の初夢」  原田宗典

 2017年 年が明けて1月1日の夜、何だかとんでもない夢を見た。どうしてこんな夢を見たのか、覚めてから考えてみたら色々と思いあたるふしがあった。
 ひとつは、眠る前、寝床の中で長谷川伸の「瞼の母」を読んでいたことである。これは年末に大谷さんから借りた本で、次のお芝居を書く上でどうしても読んでおきたいものであった。もうひとつは、これを読みながら、ぼくの脳裏には久山との旅が甦っていたことである。

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エンボス / 原研哉

エンボスという紙の加工法がある。日本語では「空押し」とも言い、彫刻板を強くプレスすることで、文字や図像を精緻な起伏として紙の上に立ち上げる。印刷とは一味違った優雅な風情を生み出す効果があり、賞状や保証書など、一枚の白い紙に価値や思いを盛り込む手法として用いられることが多い。

岡山の高校で同窓だった写真家の久山城正は、高校を卒業して二十年以上が経過したある時、不意に上京して東京で仕事を始めた。同じく高校時代からの悪友、原田宗典と久山が親しかったこともあり、すぐに頻繁に会うようになり、久山の撮影した写真で、原田の小説の装丁をしたこともあった。原田の本を例外として、友人関係で仕事をする習慣を僕は好まないので、四つに組んで仕事をした記憶はない。しかし久山は男気を感じる写真を撮る人であった。勇壮とか猛々しいとかいう意味ではなく、自分の惚れ込んだ対象をけれん味なく愛そうとする、不器用な写真であったが、その率直さ、清々しさに、心の中をぽっと照らされるような作風である。どんな時も笑いを絶やさない男でもあった。撮影中の事故で骨折して入院している久山を見舞ったことがあったが、満面の笑顔で実に楽しそうに入院していた。
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【繋心】バックスキンとオレンジのライカ  イッコウ

ひーちゃんに手伝ってもらってミラノで展覧会したときのこと。帰りの飛行機が成田に近づいたら「空港にボーイフレンドが迎えに来てるの」って、ひーちゃん嬉しそうに言ってた。ミラノでもすごいカメラ持って写真パチパチ撮りまくってた。

そう言えばあの時、空港で初めて久山くんと会ったんだ。ひとこ姫を迎えに来た王子さまみたいだったよ。
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【繋心】 久山との旅  三年経った   原田宗典

久山よ、おまえがいなくなってから三年も経つのか。年をとるごとに年月は早く流れるとは言うけれど、この三年は早かった。本当にあっという間だった。

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三年か・・・昔は、三年経てば色んなことが大きく変わった。例えば中学の三年間、高校の三年間を思い出してみれば、その間にどれだけの変化があったか、誰しも思いあたるだろう。この年になって振り返ってみると、十代の頃なんかは、今とは全然違う自分が生きていたとしか思えない。だって毎朝七時に起きて、八時半から授業があって「現国」「歴史」「生物」「体育なんて一時間ずつ勉強して、昼めし食って隠れてタバコを吸って、午後はまた二時間授業があって、それから部活に出て、帰りがけに喫茶店に寄って帰宅。夕めしを食べたら、今度は受験勉強、という繰り返しの毎日を送っていたのだ—何故そんなふうにできたのか?謎である。今や朝めし食べて、あくびをして屁をひとつこいたら、もう昼、という暮らしぶりなのだから。
久山よ、おまえの暦は、2013年の11月7日で止まってしまった。そして久山のいない世界が三年も続いた。前にも書いたけど、ぼくにとって旅のツレであった久山を失ってから、ぼくは一度も旅をしていない。
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【繋心】天国の久山さんへ   真

天国の久山さんお元気ですか?
私は更年期が始まりヨボヨボです。笑

結婚式のお写真をお願いしてから早いもので来年で丸10年経ちます。
撮って頂いた写真は常にリビングに飾ってあり、定期的に写真を変えては、久山さんの笑顔を思い出しています。

最後に電話で話した時、2人で仕事の話や最近の若い奴は!などなど、、、
ボロクソに文句を言いながら大笑いした事を思い出します!笑。
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