久山との旅/フランスワールドカップの旅(7) – 原田宗典

僕らは橋のたもとにちょうどいい感じのレストランを見つけた。ガラス戸越しに中を覗き込むと、大型のテレビモニターが置いてあり、店内も賑わっていた。ここにしようか、ということになって入ろうとした矢先、さっきまで元気だったK林君が急にうめき声をあげて頭を抱え込んだ。突然だったので皆びっくりした。

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久山との旅 / フランスワールドカップの旅 (6) - 原田宗典

宿泊先は、カルカッソンヌ駅前に建つ古いホテルで、「フランス版箱根冨士屋ホテル」といった趣である。例によってI澤嬢とブリス君がフロントでの手続きを済ませてくれて、各々に部屋の鍵が配られる。僕の部屋は2階の111号室。久山は隣の112号室。いずれもやけに天井が高く、バスルームも必要以上に広々としていて、全体的に「がら~ん」とした雰囲気の部屋である。ムネノリなんだか不安だわ・・・という第一印象を抱いたのを僕は後になって震えながら思い出すこととなる。

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久山との旅 / フランスワールドカップの旅 (5) – 原田宗典

6月16日
午前7時半起床。昨夜入り損ねたジェットバスに湯を溜めて、優雅な朝風呂を楽しむ。あまりにもセシボン、あまりにもパローレパロレパローレな朝のシチュエーションである。なんだか急に顔が引き締まって、3割がた彫りが深くなったような気分で体を拭いているところへ、ノックの音。ホテルのボーイ君が朝食を運んできたのだが、彼の彫りの深い顔を間近で見るにつけ、急に自分の顔が平べったくなったように感じる。「オレってやっぱりオリエンタル・・・」などと現実の厳しさを思い知った後、久山を起こしに行く。彼の部屋にも朝食が運ばれたところで、せっかくだから一緒に外で食おうということになる。各々朝食を載せた盆を手に、ホテルの中庭に降りる。

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久山との旅 / フランスワールドカップの旅 (4) 原田宗典

6月15日。
「おはよう」
と久山に起こされて目が覚めた。二日酔いである。昨日、試合の後、僕は部屋に戻って大急ぎで原稿を仕上げた。久山はトゥールーズ市内のラボへ行って、フィルムをデジタル処理するというめんどくさい作業に没頭した。当時はまだ写真はフィルムで撮るものだったので、デジタルに焼きなおして日本へ送るという作業は、久山にとっても初めてのことだった筈だ。編集者のK林君もやってみなければ上手くいくかどうかわからない、と言っていた。

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久山との旅 / フランスワールドカップの旅 (3) 原田宗典

6月13日。
目覚ましを8時半にかけていたのだが、それが鳴り出すよりも早く、自然と目覚めてしまう。時差ぼけのせいだろうか。窓を開け放つと、外は絵に描いたいたようないい天気である。とりあえず顔でも洗うか、と歯ブラシを手に洗面所に赴く。歯磨き粉は拝借するつもりで、洗面台の周辺を探してみたところ、これがなかなか見つからない。

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久山との旅 / フランスワールドカップの旅(2) 原田宗典

最初に話を持ってきたのは、某大手出版社の女性誌編集者K林君だった。
1998年の3月のことだ。
K林君は僕よりも7、8才若い、30代初めのサッカー好きの編集者だった。彼は、創刊したばかりの女性誌の編集に関わっていたのだが、なんとかしてサッカー寄りの記事を書こうとして必死だった。僕のところへ来たのも、なんだか的はずれのインタビューを取りに来たのが最初だった。

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久山との旅 フランスワールドカップ(1) 原田宗典

久山よ、あれからもう17年も経つのか。うそみたいだなあ。1998年6月、フランスワールドカップの旅、忘れられないよな。おまえも、あの旅は最高やったなーと言っていたもんな。
フランスワールドカップの話をするのには、まず最初に美輪明宏さんのお宅にお邪魔したところから話さなければならない。とても不思議なことなのだ。

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久山との旅 九州温泉旅行 (2) – 原田宗典

部屋に帰ると、奥の間に2人分の床がのべてあった。寝るしかない、といった風情である。ひとむかし前の和風の旅館の夜には、この「寝るしかない」と思わせる風情が多かれ少なかれ感じられたものだ。僕も久山も、その風情に素直に従って、すぐに寝支度にとりかかった。糊のきいたふとんの中にもぐりこんだのは、僕の方が先だった。
「ほんなら。おやすみ」

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久山との旅 九州温泉旅行(1)   - 原田宗典

そういえば、いつだったか久山とこんな話をしたことがある。
「わしな、シャーマンになれる素質があるらしいで」
「シャーマンってなに?」
「ハワイで聞いたんやけど、シャーマンになる資格のひとつに、人の死をひとりで看取ったことが3回以上ある、というのがあるんやて」
「人の死を? それどういうこと? おまえ、そんなこと3回もあったんか?」
「実はあるんや」

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