久山との旅 / 徒然なるままに-4 原田宗典

今日は、311のことについて書こう。

ご存知のとおり久山が撮った震災の写真はshiromasa311.comのほうで閲覧できるのでぜひそちらを見てください。もう5年も経ったけれど久山の写真をご覧になれば、あの日の記憶が鮮明に甦ってくる筈。日本中、いや世界中の人に見てもらいたい。そしてあの日に起こったことを10年先20年先まで語り継いでもらいたい。
さて、2011年3月11日午後2時46分、あなたはどこにいて何をしていましたか?久山は、なんと新幹線の中にいたそうです。当然新幹線は緊急停車し(大阪と京都の間だったらしい)車内は大混乱していた。その時たまたま久山はipadを持っていたので、それで情報収集して車内の皆に見せていたらしい。

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久山との旅 / 徒然なるままに-3 原田宗典

亡き友の 夢みし夜明け 彼はただ
にこにこ笑って いるだけだった

と歌に詠んでツイッターに投稿した1月14日。久山は、夢の中で笑っていた。良い笑顔だった。何か会話したような気もするが、覚えていない。目覚めたとき、ただ笑顔の印象だけが残った。
そして今、同日の午後5時、ぼくは今、久山宅にいて、これを書いている。
一昨年の9月から毎週のように通い続けたこの家。ぼくにとってもすごく愛着がある家だが、来週、引っ越すことになった。と言っても引越し先は同じ町内で、歩いて5分とかからない至近距離である。でも引越しは引越しだから、仁子さんは大変だ。今、部屋の中にはパンダの描かれたダンボール箱が嫌というほど散見される。ぼくも前に引越しした時、同じ運送会社だったので、このパンダマークを嫌というほど見て、今ではすっかりパンダ嫌いになってしまった。

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久山との旅「メメント・モリ」秘話 -原田宗典

来る11月20日、十数年ぶりの小説「メメント・モリ」が書店に並ぶ。嬉しい。本当に嬉しい。
「メメント・モリ」は昨年(2014)9月に当てもなく書き始めた――それは久山の家に毎週火曜日に通うようになった時期とぴったり一致している。少しずつ少しずつ進めながら火曜日に久山宅を訪れ、その1週間で進んだ分を朗読して、久山と仁子さんに聞いてもらう。二人はとても聞き上手なので、毎回読んで聞かせるのが楽しみになった。そして年が明けて今年の3月半ば、「メメント・モリ」は250枚の長さになって完成した。約半年で250枚――僕にしては上出来だ。というか、この十数年最後まで書けずに苦しんでいたことを思うと、この完成は奇跡のように思えた。「久山が力を貸してくれたんだな」とはっきり思った。

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久山との旅 / 徒然なるままに-2 原田宗典

先週、久山の愛娘ういり(愛里)と逢った。前に逢ったのは多分2003年、実に12年ぶりのことだ。
「前にお逢いした時はまだ高校生でした」
「そうかあ、岡山の操山会館で逢ったんだよな」
「そうです。ごぶさたいたしまして」
ういりはちょっと照れ臭そうに言った。そして久山の遺影にお線香をあげ、手を合わせた。その横顔と、久山の遺影を交互に見つめながら僕は涙ぐんでしまった。ういりはこの3月、長らくつきあってきた彼氏と入籍し、9月にハワイで挙式をあげたという。その結婚の報告を遺影に向かってしているのだろう。彼女の横顔はとても美しかった。そして久山の遺影もいつもより穏やかに微笑んでいるように思えた。

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久山との旅 / 徒然なるままに-1 原田宗典

商売柄、昔のことを書くと、
「よくそんなことを覚えているなあ」
としばしば言われる。そう言われると、ちょっと得意な気持ちになるのだが、本当はそんなに記憶力が優れているわけではない。思い出には「思い出し方」が幾つかあるのだ。そしてそれは決して難しい方法ではない。誰にでも簡単にできる。

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久山との旅 / フランスワールドカップの旅(最終回)原田宗典

長らく連載を続けてきたフランスワールドカップの旅も今回が最終回。
旅の流れから行くと、パリで甘い夜を過した翌日、僕らはナントという街へ行って日本対クロアチア戦を観戦したのだが、実はどういう訳かこのへんの記憶が曖昧なのである。そこで今回は特別に久山本人に登場してもらって対談形式で話をしたいと思う。

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久山との旅/フランスワールドカップの旅(10) 原田宗典

朝食の後、僕らは車で市内のロダン美術館に向かった。
この美術館は前の年に某カメラマンから「パリに行くならロダン美術館がいいよ。それも午前中ね」と言われていた場所である。午前中というのは、たぶん彫像に横から光が当たるからだろう。彫刻というのは基本的には屋外に置いてあるものなので、光の加減が一番美しい午前中に観るのが正しいのだという。

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久山との旅/フランスワールドカップの旅(9)原田宗典

港町モンペリエで奇跡のような一夜を過した翌日、僕らはパリへ向かった。
パリはワールドカップ一色で、街全体が浮かれているような感じだった。
僕らが宿泊したのは、かつてピカソが下宿していた「洗濯船」と呼ばれる建物の隣のホテルだった。場所は最高だったが部屋は最低。シングルベットひとつでぎっしりの広さ。ついているシャワールームも将棋盤くらいしかなくて、つま先だってシャワーを浴びなければならなかった。

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久山との旅/フランスワールドカップの旅(8)  - 原田宗典

結局、カルカッソンヌのホテルでは一睡も出来なかった。まず変だったのはテレビ。怖いのをまぎらわそうとしてテレビをつけたのだが、どういう訳か受信状態が極めて悪く、嬉野の温泉でエロビデオを観たときのように画面がハレーションを起こして気持ち悪い画しか映らなかったのだ。それでも我慢して、サッカー中継をつけっぱなしにしていたら、真夜中に突然プツっといって切れてしまった。

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原田宗典氏『メメント・モリ』本日発売の「新潮8月号」に掲載! -Hitobon

原田さんは、去年の9月から毎週かかさず自宅に来て「久山との旅」を書きながら、同時進行で執筆中の「メメント・モリ」を久山の祭壇の前で朗読していました。そして「久山が僕に力をくれた」と原稿用紙250枚のこの大作は3月に仕上がりました。

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