エンボス / 原研哉

エンボスという紙の加工法がある。日本語では「空押し」とも言い、彫刻板を強くプレスすることで、文字や図像を精緻な起伏として紙の上に立ち上げる。印刷とは一味違った優雅な風情を生み出す効果があり、賞状や保証書など、一枚の白い紙に価値や思いを盛り込む手法として用いられることが多い。

岡山の高校で同窓だった写真家の久山城正は、高校を卒業して二十年以上が経過したある時、不意に上京して東京で仕事を始めた。同じく高校時代からの悪友、原田宗典と久山が親しかったこともあり、すぐに頻繁に会うようになり、久山の撮影した写真で、原田の小説の装丁をしたこともあった。原田の本を例外として、友人関係で仕事をする習慣を僕は好まないので、四つに組んで仕事をした記憶はない。しかし久山は男気を感じる写真を撮る人であった。勇壮とか猛々しいとかいう意味ではなく、自分の惚れ込んだ対象をけれん味なく愛そうとする、不器用な写真であったが、その率直さ、清々しさに、心の中をぽっと照らされるような作風である。どんな時も笑いを絶やさない男でもあった。撮影中の事故で骨折して入院している久山を見舞ったことがあったが、満面の笑顔で実に楽しそうに入院していた。
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