ひーちゃんに手伝ってもらってミラノで展覧会したときのこと。帰りの飛行機が成田に近づいたら「空港にボーイフレンドが迎えに来てるの」って、ひーちゃん嬉しそうに言ってた。ミラノでもすごいカメラ持って写真パチパチ撮りまくってた。
そう言えばあの時、空港で初めて久山くんと会ったんだ。ひとこ姫を迎えに来た王子さまみたいだったよ。
事務所が麻布だったころ、となりの部屋がひーちゃんの事務所だったから、ピンポンはするけどパッとドアを開けて良く上がりこんでた。ある時、ドアを開けたら玄関に茶色の丸っこい、ちょっと古びたバックスキンが一足あった。「ごめん、いま来てるの。読書中」って、ひーちゃんちょっと、はにかんでた。あの時から僕はドアをパッと開けるのやめたんだよ。
それから何度か久山くんと会う機会が会ったけど、いつもちらっとで、いま思うとひーちゃん、久山くんのこと僕にちゃんと紹介してくれなかった気がしてる。亡くなってから、ひーちゃんから聞いた話とか、いろんな人の文章を読んでたら、久山君ってチャーミングでかっこいい男だったんだなーって、だからもっと良く知り合いたかったよ。
まさか眠ってる久山くんに再会するなんて・・思っても見なかったから。まだついこの間のことのようだけど、あれからもう三年経だったんだね。僕も久山くんのお通夜の晩から、いろんなことがあったから、なんか感慨深いし、三年って一つの節目のような気がしてる。あの頃から、いまは心が少しだけ、ひーちゃんほどじゃないけど、ちょっとは強くなったのかもしれない。
一周忌のとき、Paul Smithのオレンジ色のライカを見せてもらった。
かっこよかった!僕にはあのカメラが久山くんのイメージと重なるんだ。ものは人を表すって、そう言えば、むかし、確かひーちゃんにだったかな?聞いた気がする。
イッコウ
※イッコウさんが製作する美しい雪花硝子はこちらからご覧いただけます。