久山との旅 / スプレーのこと 原田宗典

先日、高田馬場で異臭騒ぎがあった。なじみのある駅なので、それなりに注意してニュースを見ていたら、

<犯人は赤い服の女!?>
<前に立っていた男性の首筋にスプレー!?>
<犯人の女は黒い傘をさしてた!?>
などと、都市伝説みたいな詳細が少しずつ明らかになってきた。話を総合すると、駅のホームで黒い傘をさして赤い服を着た女が、前に立つ男性の首筋にスプレーのようなものを吹きかけたところ、男性および周囲の何人かが、具合が悪くなった――ということになる。
「あ、これはあれだな」
と、すぐに思い出したのは、久山のことである。いや、久山が痴漢をはたらいて催涙スプレーをかけられた、という話ではない(そういう話があってもおかしくないけど)。ずいぶん昔、もう20年くらい前に、こんな話を聞いたことがあった。 続きを読む