久山との旅「メメント・モリ」秘話 -原田宗典

来る11月20日、十数年ぶりの小説「メメント・モリ」が書店に並ぶ。嬉しい。本当に嬉しい。
「メメント・モリ」は昨年(2014)9月に当てもなく書き始めた――それは久山の家に毎週火曜日に通うようになった時期とぴったり一致している。少しずつ少しずつ進めながら火曜日に久山宅を訪れ、その1週間で進んだ分を朗読して、久山と仁子さんに聞いてもらう。二人はとても聞き上手なので、毎回読んで聞かせるのが楽しみになった。そして年が明けて今年の3月半ば、「メメント・モリ」は250枚の長さになって完成した。約半年で250枚――僕にしては上出来だ。というか、この十数年最後まで書けずに苦しんでいたことを思うと、この完成は奇跡のように思えた。「久山が力を貸してくれたんだな」とはっきり思った。

その後「メメント・モリ」は「新潮」8月号に掲載され、単行本化への準備に入った。前述のような経緯があったので、僕としてはどうしても表紙に久山の撮った写真を使いたかった。だから仁子さんと新潮社の富澤さんと3人で、久山の遺した写真を山ほど見て、30枚くらいセレクトした。これは大変だったが、楽しい作業だった。久山の仕事をあらためてちゃんと見返す好い機会だった。そしてこの写真を今や世界一忙しいデザイナー、原研哉にたくした。
そして数週間後に上がってきた装丁を一目見て、僕は心がじいんと震えた。表紙にの花の写真を選らんだこと、中扉に月の写真を選んだこと――そこに原のあたたかい友情を感じたのだ。久山もきっと、同じ友情を感じたと思う。
こんなふうにして出来上がった「メメント・モリ」は、とても美しい本だ。できるだけ多くの人に読んでもらいたい、と切に願う。

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原田宗典

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