久山との旅/フランスワールドカップの旅(9)原田宗典

港町モンペリエで奇跡のような一夜を過した翌日、僕らはパリへ向かった。
パリはワールドカップ一色で、街全体が浮かれているような感じだった。
僕らが宿泊したのは、かつてピカソが下宿していた「洗濯船」と呼ばれる建物の隣のホテルだった。場所は最高だったが部屋は最低。シングルベットひとつでぎっしりの広さ。ついているシャワールームも将棋盤くらいしかなくて、つま先だってシャワーを浴びなければならなかった。 続きを読む

久山との旅/フランスワールドカップの旅(8)  - 原田宗典

結局、カルカッソンヌのホテルでは一睡も出来なかった。まず変だったのはテレビ。怖いのをまぎらわそうとしてテレビをつけたのだが、どういう訳か受信状態が極めて悪く、嬉野の温泉でエロビデオを観たときのように画面がハレーションを起こして気持ち悪い画しか映らなかったのだ。それでも我慢して、サッカー中継をつけっぱなしにしていたら、真夜中に突然プツっといって切れてしまった。 続きを読む

原田宗典氏『メメント・モリ』本日発売の「新潮8月号」に掲載! -Hitobon

原田さんは、去年の9月から毎週かかさず自宅に来て「久山との旅」を書きながら、同時進行で執筆中の「メメント・モリ」を久山の祭壇の前で朗読していました。そして「久山が僕に力をくれた」と原稿用紙250枚のこの大作は3月に仕上がりました。 続きを読む

久山との旅/フランスワールドカップの旅(7) – 原田宗典

僕らは橋のたもとにちょうどいい感じのレストランを見つけた。ガラス戸越しに中を覗き込むと、大型のテレビモニターが置いてあり、店内も賑わっていた。ここにしようか、ということになって入ろうとした矢先、さっきまで元気だったK林君が急にうめき声をあげて頭を抱え込んだ。突然だったので皆びっくりした。 続きを読む