Shiroと旅した四万十へ 再び -Hitobon

ひとぼん、本当に今回の旅はありがとう。照りつける太陽の下で太平洋を眺めていて涙が出ました。あんな海が見たかったんです。今までの人生を振り返ってほっと出来ました。そして、そこへ続く四万十川のゆるやかでおおらかな流れを見て、心がとても落ち着きました。

もう旅は出来ないかもしれない。それでもいいって思いました。体が思うように動かなくて、なんてことのない旅が出来なくなってしまったショックはありました。が、旅の好きなところも嫌いなところも感じることが出来て充分満足しました。今夜はゆっくり寝ます。ゆっくり、深く、沈まない直前まで・・・。
楽しい楽しい旅をありがとう。ひとぼんと河野さんに感謝です。        2013/5/9夜 Shiro
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2年前 2013/5/6~5/9 3泊4日のお遍路さんの旅。
四国をぐるりと囲むように点在する弘法大師空海ゆかりの八十八の札所寺院。少しでもいいから行ってみたいと久山が言うので、親友の河野さんと私と3人で出かけることになりました。1年間続けた抗がん剤治療を止め、自然な形で癌とつきあうようになってから1ヶ月が経ったころでした。そして四国に行くなら四万十川が見てみたい、私がそう言ったことがきっかけで高知から時計回りに西へ回ることになりました。

大日寺、国分寺、竹林寺、禅師峰寺、岩本寺、浄瑠璃寺、八坂寺、西林寺、浄土寺、繁多寺。高知から、四万十、宇和島、愛媛と回りながら尋ねたお寺は10箇所。

旅の間、久山の体調はジェットコースターの様に変化しました。特に朝は体中が辛くて起き上がれず、もうここで旅は強制ストップか、という状態が何度か・・・。が、彼の精神力はどうなってるのでしょうか。一度起き上がってしまうと100段の階段もスイスイ上がってしまいます。一旦止まると動けなくなるので動きを止めないのだ、と言っていました。

以前に比べれば随分弱くはなりましたが、夜はお酒も入ってゴキゲン。地元で取れた魚や地酒を美味しい美味しいと言って楽しんでいました。

そんな、心配だけど楽しい旅の中で、私たちは一生忘れられない2つの景色に出会いました。ひとつめは、四万十川と川に架かる沈下橋。私たち以外誰もいません。鳥のさえずる声と穏やかに流れる水の音。澄み渡る青い空と豊かに緑あふれる山々。そこに会話は必要ありませんでした。橋の上をゆっくり行ったり来たりして、おそるおそる川面を覗いたり、空を見て伸びをしたり・・・私は橋のふちに座って、久山は川べりに座っておにぎりを食べました。コンビニのおにぎりだったけど美味しかったなあ。


ふたつめは四万十川の河口の海、そう、太平洋が見渡せる丘からの景色です。
久山は言葉もなく、ベンチに座ってずーっとその景色を見ていました。ただただずーっと海を見つめていました。「こんなすごい景色、写真に撮られへん」と。

「なあ、ひとぼん。オレがいなくなった後、いつか、くまを連れてまた誰かとここに来てな。できたらオレも連れてきて」
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久山が亡くなったのが、この旅の半年後2013年11月7日。今年の5月7日で丁度1年半になりました。
桜が終わって暖かくなってきた頃、私はできれば同じ日程でこの場所を訪れたい、あの時と同じ感覚を味わいたい、と思い始めました。そしてその急な思いつきに、なんと8名の友人が、一緒に行くよ!と言ってくれました。東京から飛行機で5名、大阪から飛行機で2名、神戸から車で1名。熊本から電車とフェリーを乗り継いで1名。でも、くまは残念だけど連れていけないので家でお留守番です。

ゴールデンウィークが開けた5月9日の朝、久山の写真と小さい遺骨を抱いて羽田へ。高知空港で大阪からの2名と合流して、レンタカーで土砂降りの雨の中を四万十川中流まで3時間強のドライブでした。ところが、5月10日は真夏のような晴天。さすが晴れ男の久山です!
2年前にふらっと行った沈下橋には、調べもしないのに奇跡的になぜか偶然行けました。(全部で47もあるそうです)「ここだここだ!」と喜んで見下ろした沈下橋にはなんと柴犬が散歩中。きっとくまも来たかったのですね。(写真には小さくしか写っていませんが橋の真ん中にいます)2年前と同じように欄干のない橋の上を行ったり来たり・・・今回はみんなで屋形船に乗って川の上から景色を楽しみました。

そして、次は海に向かって車で1時間。2年前に久山がシャッターを押せなかった海が見える丘に登って、大きい大きい太平洋を言葉もなく眺めました。あの時、彼がどんな思いでここに居たのかを感じようとしながら眺めました。そしてどこまでも続く海を見ながらみんなで海岸をで延々と歩きました。久山が横にいるようでした。彼に導びかれながら歩いていたように思います。川に、山に、海に、風に、そして空にも、、、どこにでも久山がいるように感じて温かい涙がこぼれ落ちました。

穏やかに流れる時間の中で、大自然にハグされ続けた今回の旅。特別な思い出になりました。きっと久山も喜んでくれたと思います。私も心が緩んでほっとしました。参加してくれたみなさん、本当にありがとうございました!

次は、移住したかったハワイへ散骨の旅。
色んな遺言のお陰でイベントはもう少し続きそうですが、これは彼が遺してくれたプレゼント。ひとつずつ味わって楽しみたいと思います。
Shiro、ありがとう。本当にありがとう。

Hitobon

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