その日、私はとても緊張していました。
東京に出てきて数カ月。ライターとして、はじめて著名人にインタビューすることになったからです。
そして、この仕事ではじめて久山さんに会いました。
いまから13年前の2002年1月22日のことです。
実はすっごい不愛想な人やったらどないしよー。
頭真っ白ンなって、ヘンな質問してしもたらどないしよー。
沈黙続いたらどないしよー。
悪いことばっかり想像しながら、待ち合わせ場所にいると、「カワハラさん?」と声をかけられました。
「はい、そうです」と答えかけて、―― へ?!
「せやねん。よう似てるて言われんねん」と久山さん。
そう言って、めっちゃめちゃ楽しそうに笑う顔が、今も忘れられません。
実は、その日のインタビュー相手は、忌野清志郎さん。
当時の久山さんは銀髪で、本当に清志郎さんにソックリだったのです。
おかげで、それからは緊張も悪いイメージもどこへやら、ずーっと笑いっぱなしだった気がします。
清志郎さんも久山さんもお互いをまじまじと見ては、「似てるねぇ」「似てますねぇ」とニヤニヤしてるし。
ちなみに、清志郎さんへのインタビューの目的は、音楽ではなく出演した映画のことについてで、作品は三池崇史監督の『カタクリ家の幸福』。
清志郎さんは、その映画で“イギリス王室の血を引くアメリカ軍人”という、胡散臭さ極まりない役を演じていました。
以下、清志郎さんとのやり取り。
――普段、映画って見ます?
「全然」
――し、芝居は?
「見ないねぇ」
――じゃ、また映画出演の話が来たら?
「出たいねぇ」
そのココロは、「自分に興味があるの。でっかいスクリーンにどんな風に映っているのかなって」
正確に言えば、「面白いことをやってる自分が行き着く先」に興味があるとのこと。
こんなことも言っていました。
「この間さぁ、タクシーに乗ったら、運転手さんに“あのぅ、芸術家さんですか?”って聞かれたの。芸能関係ですかってのは、よくあるけど。うれしかったなあ、“芸術家”」
そうして、これまた無邪気にめっちゃめちゃ楽しそうに笑うのです。
いま、あのときのことを思い返すと、どんどん清志郎さんと久山さんがだぶって浮かんできます。
ふたりは顔だけじゃなくて、喋っていたことも雰囲気もなんだか本当にソックリでした。
清志郎さんの取材をきっかけに、その後、久山さんとはいろんな方のインタビューに出かけました。
久山さんはいっつもにこにこ笑っていて、あっという間に撮影を終えて、途中からはインタビューの盛り上げ役を買って出てくれました。私にはとても心強く、本当にありがたかった。
久山さん、向こうで清志郎さんに会ったかな。
あのときは、どーもどーもなんてやってるかな。
お互いちょっと死ぬの、“早すぎたねぇ”“早すぎましたねぇ”
違う! そんなところまで似なくていいし!!
面白くて楽しい人たちは、もっとこっちにいなきゃ寂しいよ。
カワハラ
※忌野清志郎さんの事務所にご了承いただき、久山が撮影した写真を掲載いたしました。
-Team shiromasa