先日、南谷さんが「遺影」のことを書いてくださったので今回はそのことをお話したいと思います。
2013年4月、「オレ、今が一番カッコエエのかもしれん。ちょっと痩せて顔の彫りが深くなったし髪の具合もいい感じや。体調もまあまあやし今しかないわ!」と鏡を見ながらそう言ったかと思うとすぐに大阪の大山さんに電話。「オレの遺影撮ってー!リチャード・アヴェドンの自画像風やで。今しかないねん。どうにかしてー!」
一番弟子(久山はそう言っていました)の大山さん。さぞかし困ったでしょうね。丁度とあるコマーシャル撮影の真っ最中で手一杯のところに久山のなんとかしてくれ電話。でも、大山さんはなんとかかんとか時間をやりくりしてくれました。
「遺影の撮影」。それだけの為に私も付き添って大阪1泊2日の旅。JTBの山中さんにお願いしてホテルを取ってもらい、着いた夜は大山さん一家と食事。かわいい2人の子供たちに「じいちゃん、じいちゃん」となつかれ久山は顔を赤らめながら嬉しそうに酔っ払ってました。
翌朝は、ホテルまで迎えに来てもらい、まずまずの体調の中いよいよスタジオで撮影開始。いつもと逆で今回は自分が撮影される立場。大山さんにとっては緊張の撮影だったと思います。師匠の「遺影撮影」ですから。。。が久山は本当に楽しそうでした。
その時撮ってもらった沢山の写真の中から選んだモノクロの1枚。そう、リチャード・アヴェドン風です。
それを久山が自分で仕上げてプリントしたものが「遺影」になりました。少し色を入れて仕上げています。エンボスはデザイナーの原研哉さんが作ってくれたもの。これを押す瞬間は本当に嬉しそうでした。カッコイイにこだわり続けた久山が最後に力を注いだ1枚です。
残念ながら仕上げたデータが古い壊れたPCと共になくなってしまいました。これは久山の紙焼きを私がスキャンして調整したものです。半日かけて頑張りましたがなんともいえない微妙な表現が再現できていません、、、シロごめんね!
久山は葬儀の祭壇用、自宅祭壇用、出棺用の大中小を額装して用意していました。その「大」が大きいこと!葬儀屋さんも「いくらなんでも大きすぎます」。と、結局祭壇に使ったのは「中」でした。
今も物置にある大中小の箱。可笑しいやらせつないやら。。。そして自宅祭壇の久山は、表情を変えてなにか言いたそ~うに毎日私を見つめてくれています。
Hitobon